TEL 03.3634.5645
月〜金 10:00-18:00
お問合せ
ポーラ美術館

ポーラ美術館は、箱根の美しい自然とともにある美術館。
自然環境に寄り添うように丁寧に設計された建築が、森の中に溶け込み佇んでいます。
モネ、ルノワール、ピカソといった世界的な巨匠の作品から、現代アートや工芸品、化粧道具なども含め、多岐にわたる展示品が、訪れるひとびとの目を愉しませ、そして感性を豊かにしてくれる美しいミュージアムです。
そのポーラ美術館のスタッフを務める青木様が、今回のお客様。WASHI-TECHをきっかけに【ポーラ美術館×和興】というものづくりの取り組みが生まれた経緯と、その凛としたこだわりを語っていただきました。

最初の出会いは2020年のギフトショー。求めていたものが運命のように引きあった瞬間だった。

國分社長(以下國分):青木さんと出会ったのは2020年のギフトショーでした。和興はWASHI-TECHでギフトショーに出展していて、時刻は午後から夕方に差し掛かったころ。僕は朝から一日中立ちっぱなしで喋りっぱなしだったので、正直ちょっと疲れていました。でも、ふと目を向けたその先から、後光がさしている人が歩いてきたんですよ。いやこれ本当なんです、本当に本当で!僕はその後光を見て、さっきまでの疲れはなんだったんだというぐらいに猛烈な勢いで話しかけ、箱根のポーラ美術館さんだと伺って、さらにテンションが上がってしまったんです(笑)。

●青木様はギフトショーにいらしたということは、当時何か商品開発などの課題があったのでしょうか。

ポーラ美術館 青木様(以下青木):はい。美術館のミュージアムショップで販売するグッズの商品開発を担当しておりまして、それで大小含めてさまざまな展示会に足を運んでいたんです。世界的な課題でもあるSDGsに特化した商品を強化していこうということで、そこを意識した商品開発と、あとは既存の商品も含めて探していました。ただ、小田原からビッグサイトまで出てきて、朝からずっと見て歩いて話していたので、私も正直かなり疲れていて。もうそろそろ帰ろうかと思いながら場内を歩いていたら、なぜか自然と、まるで引き寄せられるように和興さんのブースに近寄っていたんですよね。そうしたら國分社長にお声をかけていただいた。そこからはもう、私もかなり盛り上がってお話していました。國分社長とはお互いにイメージが合うというか、感覚が合うというか、最初にお会いしたこの時から、もう絶対にWASHI-TECHでオリジナル商品を作りたいと思っていました。

●なんだかちょっと運命的なものを感じてしまいますね。

國分:ええもう本当にそういう感じでした。

青木:ええ、そうですね。この土に還るWASHI-TECHという素材が魅力的でグッときましたし、SDGs以外の面でもまさに求めていたものだったんです。というのも、ミュージアムには海外のお客様も多く、ショップで日本的なものをお求めになられる方がいらっしゃるんです。WASHI-TECHは100%和紙で作られており、しかも国内生産。そういうところも理想的でした。それにポーラ美術館のイメージにも合致したというか、私の中で素材感なども含めて、ポーラ美術館の客層にもすごく合っているなと思ったんです。

偶然訪れていたポーラ美術振興財団の鈴木理事長に「これ、いい商品だね」と言っていただけた

●複合的な意味でも目的と合致した。凄いですね。では実際の商品化はどのように進んでいったのでしょう。

青木:まずは私の上司にWASHI-TECHの素材、機能などを説明しつつ、SDGsに合致する商品ができることをプレゼンしました。美術館としての価格帯や、どこにターゲットを絞っていくのか、などの点で少々時間がかかりましたが、最終的にはポーラ美術館の定番商品にしようという思いで動きました。そして國分社長にサンプルを持って箱根のポーラ美術館まで来ていただいたんです。その時にたまたま、公益財団法人ポーラ美術振興財団の理事長を務める鈴木郷史会長が、普段はあまり顔を出さない美術館事務所に来ておりまして。

國分:鈴木理事長がもう素晴らしく素敵な方で。サンプルを手に取って、「これ、いい商品だね」と言ってくださった。鈴木理事長はポーラグループの会長でもあるわけで、ファッショナブルだし、いいものをよくご存じでもあるので、とても嬉しかったですね。

青木:そして私も「責任を持って絶対に売ります!」と、そこからはさらに本格的な開発にあたりました。まず商品は、長袖Tシャツに決めました。その理由は箱根という場所にも関係します。来館する皆さまの多くは、近隣のホテルなどにご宿泊する旅行者の方が多いのですが、箱根は山の中という性質上、急に天気が変わったり寒くなることも多い。長袖Tシャツはちょっとした着替えにちょうどいいですし、WASHI-TECHは和紙の調湿性を持ちますから、夏に涼しく冬に温かく着れて、しかも肌触りがとてもいいという理想的なアイテムだったからです。もちろん、縫製にもこだわりました。

國分:例えば、通常のTシャツではTシャツ自体と同じ生地を使って襟や袖を作る。専門用語で「バインダー」と言うんですけれども、でもこのTシャツの襟や袖ではバインダーを使用せずに、「リブ編み」という技術を使っているんです。
リブ編みは非常に時間と手間がかかるのですが、これによって襟や袖など繰り返し伸縮する部分の補強になり意匠性も高まります。なにより、リブ編みには高級な質感がある。
青木さんから最初にご依頼いただいた時に、まず意識したのがポーラ美術館に来館されるお客さまの年代や、美術館のイメージに合った高級な質感だったので、リブ編みで行こうと決めたんですよね。問題は、WASHI-TECHでのリブ編みはとても難しく、これまで何度も挑戦していたのですが、実はこの時点ではまだ成功していなかった。ここでの挑戦が、実は初の成功事例なんです。

●今まで積み重ねてきた挑戦と、ここで何が何でも成功させてやるという努力が、WASHI-TECHのリブ編み成功に繋がった。

國分:はい。そしてその結果、いわゆるロンTのようなカジュアル素材ではなく、あくまで高級ニットやサマーニットに分類されるような質感のロングTシャツに仕上がりました。

青木:襟と袖、そして裾の部分にもリブ編みが入っているんですが、実際お客様からも「すごくいい」とご好評をいただいているんですよ。
さらに、そのうえでポーラ美術館のオリジナル性を出すために、色彩にもこだわりました。第一弾のカラーは、ポーラ美術館が所蔵するクロード・モネの『睡蓮』の色を再現したオリジナルカラーにしようと決めたんです。

ポーラ美術館所蔵の、モネ『睡蓮』をイメージしたオリジナルカラーに挑戦

國分:WASHI-TECHはとても優れた素材なんですが、実は調色で思い通りの色を出すのがまだ難しいんです。例えば、コットン100%ならデータが豊富にあるので、ある程度狙った色は出しやすい。一方WASHI-TECHは和紙100%の新素材、今のところ開発しているのは和興だけなので、思い通りの色を出すためのデータがまだなかったんです。なので、調色はかなり苦労しました。しかもWASHI-TECHの場合は先染めをするとどうしても風合いが変わってしまうので、それに対処するために「製品染め」という技法を取り入れることにしたんです。簡単に言うと、製品を先に縫ってその後に染めるという形です。染色は東京の向島にある染屋さんにご依頼したんですが、最初に33パターンもの染色データを取って、その上でさらに3パターンを取り、試作も6回行いました。その甲斐あって、思い通りの睡蓮の色が出せるようになりました。

青木:ありがとうございました。そして睡蓮の色が叶ったので、その後はバリエーションも作ろうという話になり、ブラックとホワイトを加えた3色展開になりました。ご購入いただいたお客さまからも「すごくいい」と言っていただいているんですよ。ショップでは見ているだけだったお客さまも、後でウェブサイトのショップページでご購入くださる方も多いんです。そしてそれから5年ーーTシャツは定番商品になりました。

國分:思えば最初の2020年は新型コロナウイルスで大変な時代でしたが、青木さんにはうちのWASHI-TECH製マスクのモデルにもなっていただき、いろいろありがとうございました!

青木:ふふふ、そんなこともありましたね。

國分:そして何より現在に続く、『ポーラ美術館×和興』という枠組を作ってくださった。本当に感謝しています。引き続き、どうぞよろしくお願いします!

青木:実は今、新作と新色を考えているんですよ。発端は理事長の発案なんです。

國分:はい、もちろんやらせていただきます!

青木:はい、どうぞよろしくお願いいたします(笑)。

ポーラ美術館
活動情報

ポーラ美術館では、現在『フィリップ・パレーノ:この場所、あの空』を開催しています。
そのほか、特別展示などポーラ美術館の最新情報は、下記からどうぞ。
ポーラ美術館 オフィシャルHP

公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館

〒250-0631
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285

この記事をシェアする